表面的には順風満帆
アルベルト・ザッケローニ監督が就任して、はじめて負けたのが前のアウェーでの北朝鮮戦だった。ただ、3次予選通過を決めた後の消化試合であり、放り込み戦法だと苦戦してしまったが、深刻なダメージではない。 日本代表は極めて順調だ。少なくとも表面的には。
奥歯にモノが挟まったような書き方になっているのは、表面的には大きな問題にはなっていないものの、いくつかの課題を抱えたままだからだ。
その潜在的な問題が2012年中に、あるいはブラジルW杯までに表面化する、とはかぎらない。目に見える形で解決するかもしれないし、誰も気がつかないうちに忘れ去られ、そのまま何事もないままかもしれない。
ただ、極めて順調な日本代表の歩みの裏には、いつ噴出してもおかしくない問題が潜んでいる。
遠藤のバックアップ
誰もが気づいていながら、いまだに解決策がないまま、いたずらに時間だけが過ぎている問題点がある。遠藤保仁のバックアップがそれだ。
遠藤がいるときの日本代表と、いないときでは、まるで違うチームのようになってしまう。いわゆる“代えの効かない存在”になってしまっている。
強いチームというのは、何人かの代えの効かない存在によって支えられているものだ。そういうプレーヤーがいるからこそ強力なのであって、代えの効かない存在はチームにとって本来悪いことではない。
遠藤のケースが問題になってしまうのは、彼がブラジルW杯本大会のときに34歳になるからだ。
31歳の遠藤が活躍しているのだから、34歳でも同じかもしれない。しかし、通常34歳はピークを過ぎている。負傷のリスクも高くなる。いざというときに備えて、遠藤の代役を用意しておくのは当然だ。ところが、もともと代えの効かない存在なのだから、そう簡単に代役など見つかるはずもない。
ザッケローニ監督は一時期、家長昭博を起用していた。家長はキープ力が抜群で、遠藤に劣らない正確なボールタッチができる。素質は十分。だが、結局はフィットしないまま代表にも呼ばれなくなってしまった。所属クラブのマジョルカでのポジションが違っていて、出場機会も増えておらず、ザッケローニ監督がボランチで起用した試合で致命的なミスを犯すなど、信頼を得るには至らなかったようだ。
遠藤を休ませた北朝鮮戦では、細貝萌を先発させた。だが、細貝は遠藤とは違うタイプのボランチだ。その点は、細貝とともに代表の常連組である阿部勇樹も同じである。
もし、ザッケローニ監督が遠藤不在の際に細貝を第一候補と考えているなら、それは遠藤の代役としてではない。そのときは、遠藤がいるときとは“違うチーム”になる。