池田コーチに全幅の信頼を寄せた
特筆すべきは、日本での経験だけではなく、日本人指導者を三顧の礼をしてナショナル・コーチングスタッフに迎え入れたことだ。監督は今回のチームの原型となるU-20ワールドカップから、日本人の池田誠剛氏をフィジカルコーチとして迎え入れていた。
Jリーグ時代にフィジカルトレーニングの重要性と体系的なコンディショニング管理の効果を知っていた監督は、池田コーチに全幅の信頼を寄せ、練習メニューはもちろん、選手起用のアドバイスまで一任したという。
ロンドン五輪は3日間間隔で試合があり、移動も多いハードスケジュールであったが、選手たちのコンディションを維持できたのは、池田コーチの手腕の高さの証明であり、監督も認めるところだ。
「池田コーチと2009年からやってきたことは、KFAの財産になる。これからのユースチームやU-20代表、U-23代表にとって、重要なマニュアルになると確信している。KFAも池田さんが進めてきたことを白書のように記録している。これからの世代を成長させるための重要な指針になるだろう」
ちなみに池田コーチは監督とともに頻繁に来日し、Jリーグの視察や選手派遣に関するJクラブへの説明にも一役買った。大会直前には、シーズンオフで練習環境がままならなかったパク・チュヨンやク・ジャチョルら欧州組のために、2人がヴァンフォーレ甲府で練習できるよう橋渡ししたのも池田コーチだった。
さらに言えば、今回の韓国五輪代表には5名のJリーガーがいたが、彼らの早期合流(7月2日)が実現できたのもJクラブの理解があったからでもある。
韓国の躍進にはJリーグの間接的な協力もあったのである。監督も、「Jリーグからとても多くの協力を得たのは事実です」と認めている。
日韓の激突で高まったモチベーション
因縁めいていたのは、その日本と3位決定戦を戦わねばならなかったことだろう。オリンピックという舞台で、それもメダルマッチで日韓が対決することになった事実に両国の宿命じみた関係を感じずにはいられなかったが、監督は言っている。「もしも3位決定戦の相手が日本ではなくほかのチームだったら、難しい試合になっていただろう」
決して関塚ジャパンを軽んじていたわけではないと思う。ただ、メダル獲得=兵役免除という実利とともに「韓日戦だからこそ勝たなければならない」という伝統のライバル感情が選手たちのモチベーションをさらに駆り立てると指揮官は信じていた。