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アジア 12年前

韓国サッカーはいかにして躍進したか。ホン・ミョンボ式リーダーシップ【サッカー批評 issue58】

『韓国と日本の良さを融合させて導き出したニュースタイル』
ロンドン五輪で、日本を圧倒した韓国。試合後の騒動により、かき消されてしまっているが、韓国の躍進にはホン・ミョンボ監督の手腕がある。絶大なるカリスマ監督は、いかにチームを導いていったのか。その秘訣に迫る。

text by 慎武宏 photo by editorial staff


ロンドン五輪で史上初のメダル獲得を成し遂げたホン・ミョンボ【写真:編集部】

タレント集団を束ねたカリスマ監督

 ロンドン五輪で史上初のメダル獲得の快挙を達成した韓国。Jリーグはもちろん、ヨーロッパでプレーする選手も多く、オーバーエイジも含めそのほとんどが現役A代表ということで、大会前から「史上最強」の呼び声が高かった。

 そのタレント集団をまとめ上げたホン・ミョンボ監督の功績は大きい。選手を服従させたり、特定選手の厚遇もせず、チームへの献身と犠牲精神を求めたその手法は、「ホン・ミョンボ式リーダーシップ」と呼ばれ、高い評価を得ている。もともと2002年ワールドカップ四強神話の主軸であり、絶大なカリスマを誇ったスター選手だったが、監督として前人未踏の快挙を成し遂げたことで、「ヒディンクの影を消した名将ホン・ミョンボ、国内監督でも世界に通用することを示した」とされているほどだ。

豊かな国際経験とJリーグでの経験

 もっともホン・ミョンボの「監督力」は、韓国だけで育まれたものではない。もちろん、その絶対的なベースとなっているのは生まれ育った韓国サッカーだが、彼が積み重ねてきたさまざまな経験がその「監督力」の源になっている。たとえばこれまで接してきた外国人指導者たちの影響がある。選手時代にはヒディンクの指導に触れ、05年からディック・アドフォカートのもとで韓国代表コーチとして指導者人生を始めた。ピム・ファーベックの補佐役も務めたホン・ミョンボ監督は、かつてこう語っていた。

「ヒディングからは組織のリーダーたる振舞いを、アドフォカートからはコミュニケーションの重要性を、ピムからは練習方法やスカウティングで着目すべき点などを学んだ」

 コーチを務めた北京五輪後は、KFA(韓国サッカー協会)やAFC(アジアサッカー連盟)主催の指導者研修に積極的に参加し、2012年南アフリカワールドカップも現地視察した。その直後にインタビューした際には、「プレミアやスペインリーグをよく見る。ただ、個人的に好むのは昔からイタリアだ。強固な守備ラインを前提に相手を攻略していく。そういうスタイルが好きだね」と教えてくれた。現役時代から数多くの国際経験を積んできた監督は、今でも世界にアンテナを張り巡らせている。

 もちろん、選手時代の経験も大きい。ともすれば監督と選手が主従関係になりやすい韓国で、15歳以上も歳の離れた選手を尊重し、決して高圧的に接することがないそのやり方は、Jリーグ時代の実体験も無関係ではないだろう。

「私は日本でたくさんのことを学んだ。トレーニング方法、クラブの選手管理方法、メディアとの関係性や活用方法、何よりも監督やクラブが選手の価値を認め、選手たちを尊重する環境作りが参考になった。整った環境の中で自信を持ってプロ生活を送り、若い選手が萎縮せずにレギュラーを奪うために頑張る姿はとても印象的だった」

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