世代間のギャップ、リーダーの不在
だが、さらに2人の87年組――ジェレミー・ムネズとアテム・ベンアルファの加入は、世代間のギャップがさらに広がることを意味していた。そしてその格差を埋めることのできる、強力なリーダーシップを発揮できるリーダーが、フランス代表には長く不在だった。
1試合だけならそれでも何とかなる。しかしW杯やEUROのような長期の大会では、どこかに必ず綻びが生じる。そのとき誰がそれを繕うのか。4年前のEUROでは、ティエリ・アンリが試みたが見事に失敗し、2年前のW杯では、誰も試みようとせずに暴走したチームは空中分解した。
どうもブランは、その点を軽視したように思えてならない。ラップ世代も、国外のビッグクラブでの経験を経て、精神的に成長した。クニスナのような事件は生じえないし、問題が起こっても、選手たちの規律と団結心、自身のマネジメント能力で解決できると。たしかにベンゼマに関してはブランの判断は正しかった。しかし他の選手たちは……、彼らの成長を過大評価したことが、後の誤算を生んだとは言えないだろうか。
とはいえ続くウクライナ戦は順調だった。イングランド戦で明らかになったピッチ上の課題(攻撃の偏りとスピードの欠如、守備の不安定)も修正され、スペイン、ドイツに次ぐチームが、この大会で新たに誕生することすら予感させた。
ところがスウェーデン戦が、躓きの始まりだった。すでにリーグ敗退が決まっていたスウェーデンを、フランスは圧倒的に攻めたてた。だが気迫あふれる相手の前に得点できず、2対0と完敗を喫してしまった。フランスにとっては、ブラン監督就任2戦目のベラルーシ戦(2011年9月3日)以来の、24戦ぶりの敗北だった。
俺より役立たずがピッチに残っていた!
同時に問題も生じた。ロッカールームに戻るや不満を爆発させたのは、守備面のしわ寄せを1人で受けたアルー・ディアラだった。守備の義務を果たさず、モチベーションの上がらなかったチームメイトを、彼は激しく糾弾した。落ち着くようにとナスリがかけた言葉は、ナスリ自身がその批判の対象であっただけに、かえって火に油を注ぐだけで、2人の口論は激高した。
一方、途中でピッチを退いたベンアルファは、携帯電話で熱心に話し込んでいた。驚いたブランが苛立ちの声をあげる。「アテム、家族と話すのは今じゃないだろう!」
途中交替に不満のベンアルファも言い返す。「俺より役立たずがピッチに残っていたのに、どうしてそいつらを代えないんだ!」