アジア人選手に懐疑的なスペイン
スペインでは、ファンもマスコミも監督も選手も、常に日本人選手を始めとするアジア人選手に対しては懐疑的だ。そこには、城彰二(バジャドリード)、西沢明訓、中村俊輔(ともにエスパニョール)、大久保嘉人(マジョルカ)などの選手がスペインに上陸してから、生み出された偏見がある。彼らの移籍で話題に上っていたのは、日本人選手を獲得することで生み出されるアジアの市場におけるクラブ側のテレビ放映権収入やマーチャンダイジングについてのみだった。
彼らが「サッカー選手としてどうか?」については、ほとんど取り沙汰されなかったのだ。そういった過去の事実が不信感を生みだし、その空気はいまだにスペインに蔓延している。ヨーロッパに続々と押し寄せている日本人選手が、技術的にも戦術的にも、またフィジカル面でも明らかに向上しているにもかかわらず、である。本田圭佑は、そんな新しい世代の日本人の代表格と言えるだろう。
偏見にも等しいプレッシャーに打ち勝たなければならない
もしも、本田がいつの日か、レアル・マドリードに移籍する日がくるとしたら、あらゆるスペインメディアは本田の獲得について戦力としてではなく、経済面が最大の理由だと言及し、フロレンティーノ・ペレス会長による日本市場の開拓が意図としてあるからだと報じるだろう。マスコミの取り上げ方に疑問を挟む余地はない。そして、最初からピッチに立つとなれば、「経済条件によってクラブ側が監督に強制しているおかげで、常にプレーさせてもらえるのだ」と、ほとんどどのマスコミは指摘することだろう。
言いかえれば、どんな日本人選手であってもスペインでプレーするのであれば、これこそが最初から用意されている選手の評価なのだ。ピッチに立った瞬間から偏見にも等しい“プレッシャー”と戦いながら、自分の実力によって「スペインリーグで十分にプレーできる」「単なるビジネスの道具ではない」と証明することを義務付けられる。
レアル・マドリードについて言えば、そこで要求されるハードルは、さらに高くなる。もしも、本田がレアル・マドリードに来ようとするならば、そういった周囲の疑問を打ち消さなくてはならない。ピッチに立つ前のレベル、つまり、チームメートとの最初の練習の瞬間から持っている実力をすべての人の前で証明しなければならないのだ。スタメンの座を正当化し、チームメートが不公平だと感じることも避けなければならない。それもチームと監督の間に築かれているバランスを壊すことなく。