大胆かつ革新的なアイデアマン
グアルディオラやティト・ビラノバに関して疑いようのないことは、カンテラに対して確固たる信頼を置いていること。ティト体制になってもそれは変わることはない。日々ラ・マシア出身選手の重要性が増していく中、昨季は4人のカンテラ出身選手(バルトラ、ムニエサ、ドス・サントス、モントーヤ)がトップチームに昇格。近い将来にはグリマルドやとりわけU-19欧州選手権でスペインを優勝に導いたデウロフェウもトップチームの一員となっていくはずだ。また、奇しくも今のところ唯一の新加入選手であるジョルディ・アルバもバルセロナのカンテラ出身である。
ビラノバはグアルディオラと同様、ラ・マシアでの生活を経験しており、幼い頃からクラブの空気を吸ってきた。グアルディオラとビラノバとの間にはより多くの共通点が存在している。彼らはグアルディオラがバルセロナの指揮官となってから共に働いており、その中でビラノバの役割は非常に重要なものとなっていた。ビラノバに関してこんな逸話がある。昨年の11月、彼は手術後の自宅療養のためバレンシアへの遠征に帯同できなかった。にもかかわらず、試合の際には、アシスタントコーチがベンチから彼に携帯で連絡をとり、ペップはテレビ画面越しに見ている彼に助言を求めたのだという。
また、セスクが加入した昨季、グアルディオラはベルナベウでレアル・マドリー、そしてサン・シーロでのACミランを相手に3-4-3という大胆なシステムと戦術を用いた。相手サポーターの激しいブーイングの中、攻撃的に挑んだその2試合はバルセロナのプレースタイル、現代サッカーにおける戦術において大きな革新を見せた。しかしながら、この3-4-3というシステムは「守備が不安定」ということで多くの批判を受け、それ故にティトの最初のシーズンにおいて3-4-3が多く用いられることはないだろう。
また、昨季終盤を怪我で棒に振ったビジャの復帰により、FW陣のポジション争いが一層激しくなる。中盤も含めた6つのポジションに入る選手の人選についてもティトは頭を悩ますこととなるだろうし、現状ではペドロ、チアゴといった才能溢れるタレントが控えに回る可能性が高い。しかもこれは、新たな加入選手が来る前の状況だということを忘れてはいけない。
加えて、メッシのような違いを生み出す特別な選手を抱えるチームというのは、メッシが欠場した時の代えに困るもの。メッシは現時点で世界最高の選手であり、チームのサッカーに対して大きな影響を与える。グアルディオラが「メッシに心地よくプレーさせる」と述べていたように、ティトも「メッシありき」のチーム作りを踏襲していくだろう。