目標はあくまで優勝。初戦は手堅く“偽9番”ゲッツェを置く
ラフなTシャツ姿で、くちゃくちゃとガムを噛む。2016年6月12日の欧州選手権グループC、対ウクライナ戦を目前にした代表監督の佇まいは、とても野心家には見えない。しかし一見には無防備な人間ほど、獰猛な何かを、胸の奥に飼っているものだ。
5月30日、本大会に臨む最終メンバーが発表されると、ポドルスキは「目標は欧州王者」と公言した。もちろん「目標」を抱くのは、ポドルスキだけではない。14年にブラジルW杯を制してなお、ドイツ代表の地平は果てしない。
1996年イングランド大会以来の「欧州王者」となる。「目標」は、ただそれだけだ。ドイツの野心を満たすべく、代表監督ヨハヒム・レーブは、10人の世界王者を初戦のピッチに送り込んだ。
開幕直前に負傷離脱したCBリュディガーの代わりには、ムスタフィが入って、ボアテングとコンビを組んだ。右SBにはヘーヴェデスが入る。ブラジルW杯の後で取り組んできた3バックではなく、4バックを形成する。もっともレーブは、4バックか3バックかは、トーナメントで柔軟に選択すると公言していた。
初戦ということで、手堅く入ろうとしたのだろう。ワントップには偽9番としてゲッツェを置く。優勝したブラジルW杯を彷彿とさせるスタイルで、ウクライナ戦に挑んだ。
前半は、引いたウクライナを相手にドイツが主導権を握る。ボランチのクロースが攻撃のタクトを振るう。左SBヘクトルに手振りで「上がれ」と指示をして、ビルドアップを担う。縦パスを入れる。前に上がってパスを受けて、逆サイドへボールを回す。エリアの外からミドルシュートを打つ。
今大会で、レーブは特にクロースの存在を重要視している。