前線の選手がパスを多く受けていたアトレティコ
2015-16シーズンUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝2ndレグ、アトレティコ・マドリーは前回王者のFCバルセロナを2-0で破った。
アウェイでのファーストレグを、アトレティコは1-2で落としていた。その試合では先制点を奪ったものの前半で退場者を出してしまい、自陣に押し込まれる展開を強いられた。ボール支配率でもバルセロナに圧倒されている。
アトレティコのホーム、ビセンテ・カルデロンに舞台を移したセカンドレグでも、ファーストレグと同様にボールを支配したのはバルセロナだった。ポゼッション率でいうと、72%のバルセロナに対し、アトレティコは28%となっている。
しかし、ボールポゼッション率は、ゲームの流れを示すものではない。セカンドレグでボールが展開していたのは、むしろバルセロナの陣地内。ピッチを6分割してボールが展開した位置を見てみると、バルサのゴール前が最も多い。セカンドレグのアトレティコは、むしろバルセロナを押し込んでいたのだ。シュート数こそバルセロナの12本に対してアトレティコは9本だが、枠内シュート数は4対6でむしろアトレティコが上回っている。
この試合のアトレティコに特徴的なデータが、パス受け数の上位選手だ。上から順に4選手を挙げると以下の通りになる。括弧内はパス受け数。
左MF:コケ(22)
FW:グリーズマン(19)
右MF:サウール・ニゲス(17)
FW:カラスコ(13)
全体のパス成功数122本のうち、58%を彼ら4人が受けていることになる。出場時の平均ポジションを示した図1を見てもわかるように、彼らは前線にポジションを取っていた4人である。データアナリストの庄司悟氏はこのデータについて次のように語る。
「ボールポゼッションを重視するチームであれば、後方の選手たちのパス受け数が多くなるのが普通です。そしてボールを大事にするチームと対戦する大半のチームも同様に、GKを筆頭に後方の選手のパス受けが多くなります。しかし、この試合のアトレティコはそうではありませんでした。ボールを奪ったら前線にパスを送る策が徹底されていたため、前線の選手たちのパス受けが多くなっていた。
この数字はボールコンタクト数ではなくパス受け数なので、しっかりとパスが通らないと数字は増えません。また単純なカウンター狙いのチームだったら、最前線にいる選手のパス受けが極端に増えているはずですが、アトレティコはそうではなくて中盤サイドの選手のパス受けも多い。相手に攻めさせた上でのロングカウンターを狙うのではなく、高い位置でボールを奪って、丁寧にかつ効率的に前の選手にパスを出せていました」