国内屈指のサッカーアカデミーを持つベトテル
今夏もU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジが開催され、まだ幼さの残るベトナムの少年らがJクラブやバルセロナ、エスパニョールといったスペインの名門下部組織を相手に好勝負を演じた。結果は、鹿島や東京V、大宮らJクラブ勢を打ち破ってのベスト4。今大会を通じて最大のサプライズだったに違いない。
ベトナムサッカー界はこの7、8年、若い人材の育成に注力しており、各クラブのアカデミーが全国から優秀な児童を選抜して英才教育を行っている。今回のU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジに出場したチームもその一つ。今大会では、U-12ベトナム代表という登録名だったが、実際にはベトテル(ベトナム軍隊通信グループ)傘下の下部組織だ。
ベトテルは、国内屈指のサッカーアカデミーを持つことで知られる。その歴史はいささか複雑だ。前身は、テーコン(軍隊サッカークラブ)という名で親しまれた国民的クラブ。ベトナム北部選手権優勝13回、ベトナムリーグ優勝5回を数える名門だったが、2009年に国防省が同クラブの改称を決定し、通信最大手の国営企業ベトテルの傘下となった。
それから間もなく、トップチームが買収され、タインホアFC(現FLCタインホア)となり、2010年にはセカンドチームも買収され、現在のハノイT&Tとなった。
消滅の危機にあったベトテルだったが、アカデミーは地道な活動を続け、ユース年代の国内大会で、次々と好成績を残してクラブを再生させた。ベトテルのトップチームは今季の3部で優勝しており、来季の2部(Vリーグ2)昇格を決めている。
アカデミー出身者の中で、特に評価が高いのは、「黄金世代(昨年のU-19代表)」で守備の要として活躍したCBブイ・ティエン・ズンだ。今季はVリーグ1のホアン・アイン・ザライ(HAGL)にレンタル移籍してレギュラーを奪取。ベトナム代表の三浦俊也監督からも絶大な信頼を得ており、U-23代表やA代表でも定位置を獲得している。