指揮官に誘われ、HSVへ
携帯電話が鳴った。聞き慣れたドイツ語――、ハンブルガーSV(HSV)の指揮官だった。
「ラッバディアだ。来る気はあるか?」
酒井高徳は日本でオフに入っている。
「一緒にやりたいと思っています。もうちょっと色々と考えたいです」
酒井は意思を伝えた。ブルーノ・ラッバディアとは、かつてシュトゥットガルトで共に戦っている。加入した11/12シーズンの途中から、13/14シーズンの始まりまでのことだ。
2015年7月12日、メンヒェングラッドバッハにてテレコムカップ2015が開催された。テレコムカップは1試合45分間の変則的なミニトーナメントである。ボルシアMG、バイエルン、アウクスブルク、そしてHSVの4チームが参加した。シュトゥットガルトから3年契約でHSVに移籍した酒井の姿もある。そのまま5日からのスイス合宿に合流した酒井にとっても、シーズン前の貴重な実戦の場だ。
これから始まるハンブルクでの日々に、酒井はどのような展望を描いているのだろうか。
初戦をボルシアMGと対戦したHSVは、速攻に苦しみながらも45分間を0-0で終えた。PK戦の末、決勝に進出する。酒井はベンチで過ごした。出番はなかった。決勝では、バイエルンを2-1で下したアウクスブルクと対戦する。酒井は右SBでの先発となった。
「自分のリズムを取り戻す」。試合後に酒井はそう口にした。アウクスブルクとの試合の中で、酒井は「取った後のボールを縦に、一発目のワンタッチでポンって付けるのを意識していた」と言う。13分にはオリッチへ、19分にはゴウアイダへ、シンプルに縦にパスを送る。そこからさらに攻撃は繋がっていった。
「ミスしたところもあったし、上手くボールを運べないところもあったんですけど、自分の思っているリズムを取り戻すには、前に、前にっていうところが今は必要だと思う」