澤から引き継いだ、キャプテンの座
いまにも決壊しそうな涙腺を必死にこらえているのが、テレビ越しにもはっきりと伝わってきた。アメリカ女子代表に2対5で屈し、世界女王の肩書を失ってから数分後。なでしこジャパンのキャプテン、MF宮間あや(岡山湯郷Belle)は目を真っ赤に腫らしながら、気丈にも胸を張ってテレビのフラッシュインタビューに答えている。
「自分がやれることはすべてやったと思いますし、チームのみんなも本当に毎日、文句も言わずにこのW杯を獲るために努力をしてきたと思うので。今回は獲れなかったですけれども、本当にみんな頑張ったと思います」
人前でほとんど見せたことのない涙を、宮間は二度流してきた。2012年夏に開催されたロンドン五輪。決勝で今回と同じアメリカに1対2で惜敗し、銀メダルに終わった直後のピッチで人目をはばかることなく号泣した姿は、いま現在につながる悔しさの原点として語り草になっている。
そして、あまり知られていない、というよりも忘れられているのが、フランス女子代表との準決勝に勝利した直後に感極って流した涙だ。28本ものシュートを浴びながら何とか2対1で逃げ切り、チームメイトたちが作った歓喜の輪の外側で、背番号8は頬を伝う熱いものを何度も何度もぬぐっていた。
その年の3月に開催されたアルガルベカップから、前任者のMF澤穂希(INAC神戸レオネッサ)からキャプテンを引き継いだ。
「みんなが『自分というもの』を出せるような、明るい雰囲気にしたい」
新キャプテンとしての抱負をこう語った宮間だが、なでしこジャパンが世界一となった前年の女子W杯ドイツ大会の期間中から、きめ細やかな心遣いを発揮して澤をフォローしてきた。
たとえば、グループリーグ最終戦でイングランド女子代表に0対2で完敗した翌日の練習。宮間はFW大野忍(INAC神戸レオネッサ)とともにはしゃぎまくり、チーム内に漂いかけていた停滞ムードを一掃。準々決勝で、大会3連覇を狙っていたドイツ女子代表を撃破する快挙の土壌を作った。