中学生のときに経験した大きな“壁”
当たり前のことが、当たり前でなくなったとき。当たり前のように自分の生活の中心にあるものを失ったとき――。
人は誰でも、壁にぶち当たり、絶望するだろう。そこから、その壁をどうやって乗り越えるかを考えるのではないだろうか。
そして、乗り越えた先には、ひとまわり大きくなった自分がいるはずだ。
サッカー選手でいえば、それは、当たり前のように蹴っていたボールを蹴ることができなくなったとき。つまり、「怪我をしたとき」といえる。
私は中学生のときに、2度、そうした経験をしてしまった。当然つらかったけれど、子どもながらにそのとき気がついたこと、感じたことは、今の自分の財産になっている。
最初の怪我は、中学2年生の4月。私はいつものとおり、よみうりランドで練習をしていた。普段と変わらない練習の中で、後ろにターンをして走ろうとしたときのこと。「ボキボキ」私の膝から、鈍い音がした。今まで聞いたことのない、骨が折れるような音だった。その瞬間、そのまま立てなくなってしまった。
倒れこんだ私の様子を見て、当時、ヴェルディのコーチをしていた都並敏史さんが「どうしたんだー!?」と駆け寄ってくれて、私を抱きかかえて医務室まで運んでくれたことを覚えている。
医務室では仮の治療をしてもらい、しばらくして落ち着いたら、膝にサポーターをつけて普通に歩いていた。歩くことができたため、そこまで大きな怪我だとは、自分では考えていなかった。
その後、病院で検査した結果、「左膝前十字靱帯損傷」という診断を聞かされた。当時、その怪我がどんなものかもよくわかっていなかった。
詳しく聞いてみると、手術をしなくても復帰できるようになるかもしれないと言われたし、まだ中学生だった私は、学校の授業もあったため、夏休みまでリハビリをして様子を見ることになった。