フットボールチャンネル

部活動に“顧問”は必要か? ある教師の悲痛な叫びから考える、教師も生徒も疲弊する顧問強制問題

text by 植田路生 photo by Asuka Kudo / Football Channel

毎日厳しい練習することは正しいのか?

 また、部活動における練習のあり方にも問題があるように思える。毎日、毎日、休みなく練習を続けることが果たして正しいことなのか。たしかに忍耐力は鍛えられるかもしれないが、効率がいいとは言えない。サッカーにおいては、練習のし過ぎによる踵骨骨端症や第五腰椎分離症といった怪我を発症する子どもが増えている。

 幸野氏が言うには、スペインは基本的に週3日、ドイツでは週2日しか練習をしないサッカークラブもあるという(これは例外ではなくごく一般的なものだ)。しかしながら、しっかりと選手は育っている。

 週に3日あるいは4日の練習であれば、今までよりも少ない教師の人数でまかなえる。専門外の分野まで指導するという問題は残るが、全員が疲弊していくよりはずっといい。生徒も時間的な余裕が増えることで、勉学など部活動以外も充実することができる。

 土日に休みを入れようとしたA氏には、保護者から「もっと熱心に指導して欲しい」と休日の練習を希望されたという。たくさんの練習=技術の向上、という迷信は21世紀になっても残念ながら存在している。

 いきなりすべてが変わるのは難しい。だが、全国のサッカー部の中には、非効率的な練習をやめ、結果を出すことに成功した指導者(顧問)が多くいる。サッカー界から“何が子どもたちのためになるのか”正しい情報の発信を続けるべきだ。

 この問題は解決するのは時間がかかり、難しさもあるが、複雑ではない。一体何が目的なのかを今一度見つめ直すことだ。「今までもそうしていた」「みんなが我慢している」「毎日部活をしなければ」。こんな思考停止はすぐにやめてもらいたい。

 A氏は本当に自分の権利を主張しているだけだろうか。切なる訴えに一人でも多くの人の心が動くことを願ってやまない。

【了】

関連リンク

高校サッカー 心を揺さぶる11の物語
それでも「美談」になる高校サッカーの非常識
伸ばす力 世界で輝く「日本人選手」育成レシピ
少年サッカーは9割親で決まる
子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング
高校サッカー監督術 育てる・動かす・勝利する

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!