売上のすべてを寄付。ふくやの「アビスパ応援ギフト」
昨年10月16日、西日本新聞は次のように報じた。
〈サッカーJ2のアビスパ福岡が経営危機に直面していることが15日、明らかになった。スポンサー収入の大幅な減少などで、資金繰りが11月末には滞り、運営資金約5000万円が不足。12月にも社員や選手の給与遅配が起きる事態となっている〉
記事は5月頃からアビスパの経営が悪化していたこと。さらにクラブライセンス剥奪の可能性にも言及していた。
どうにか資金ショートを回避し、最悪の事態は免れたが、大塚唯史社長は11月末で引責辞任。下田功専務も残務処理を終えたのち、退いた。
このときアビスパの支援に乗り出した地元企業のひとつに、株式会社ふくやがある。辛子明太子の元祖と知られ、福岡の食卓にはなじみ深い。
ふくやの支援部・網の目コミュニケーション室の宗寿彦さんはこう語った。
「まぁ、最初に聞いたときはびっくりしましたね。資金ショートというのは一般の会社では倒産ですから。弊社の統括部長、川原武浩はアビスパの社外取締役を務めていますが、守秘義務がありますので内情は知らされていませんでした」
10月31日、ふくやは支援企画を発表する。発送用に「アビスパ応援『うれしいギフト』満足セット・笑」(3000円)目標数1000個。店頭発売用に「いか明醤でアビスパ応援」(500円)目標数4000個。
目標額は500万円に設定した。利益分を寄付するのではなく、売上げをすべて支援金として届ける。これを提案した川原統括部長は、ふくやの代表取締役社長の川原正孝の甥にあたる人物だ。
会議で支援計画を聞いた川原社長は「おう、いけ」と短くひと言。そして、「あのときとまったく同じ状況だ」と宗さんたちに昔話を聞かせたという。