合宿で行われていた練習はたったの1つ
そして、これもまた広く知られている通り、彼の“あの”サッカーの柱は何と言っても華麗なパスワーク。これに尽きるとさえ言えるでしょう。ただし、そのパスワークを実践させるための考え方は、件の言葉通り、実にシンプルにして明快です。
実際、私が協会の名を受けて赴いたトレント(伊北部)での合宿でも、行われていたトレーニングは事実上“1つだけ”だったのですから。
バルサや現在のバイエルンを知っている方々ならばともかく、そうではない一般のファンであれば半ば信じ難い話なのでしょうが、そのトレーニングは驚くほど“シンプル”です。
誤解を恐れず言えば、それこそ見ている側が拍子抜けするほどの“軽さ”です。具体的なメニューと言えば最初から最後まで“ロンドス”だけなのですから。ただ、後述する通り、その実態はといえば決して軽くはないのですが。
もちろん段階的に難易度は上がって行きますが、とにかく“パスワーク”の精度に磨きを掛けることのみに特化しているとさえ言えるでしょう。まさに、例の『使うボールは僅かに1つ。そしてすべてのプレーはその“ボール”を使ってこそ実践される』を限りなく具体的に示す一例と言えるのではないでしょうか。
当然のことながらその“ロンドス”は予め実に良く考えられたものです。より正確を期して言えば、すべてのロンドスが常に実戦で起こる現象をトレーニングのピッチに落とし込んだものとなっています。そこに“ムダ”はないわけです。
“ロンドス”。つまりイタリアで言う“トレッロ(鳥籠)”は、グアルディオラの指揮下ではまさに実戦そのものになります。単に身体を温めるための“ゲーム”ではない。