岡山一成という稀代の才能
――まず奈良クラブとの提携を結ぶきっかけとなった人物のことから聞かせてください。岡山一成(選手兼奈良劇場総支配人)というのは、天野部長にとってどういう存在なのでしょうか。
「今の川崎フロンターレのクラブとサポーターの距離感を作ってくれたのは、間違いなくオカだからね。日本サッカーのキング・カズといえば三浦知良選手だけど、僕の中でのキング・カズは岡山一成なんだよ。
それに柏、仙台、札幌と、ウチだけではなく彼の行ったクラブは選手とサポーターが一体感を作り上げているじゃない? Jリーグの良さを伝える形を作ったのはオカだと僕は思っているぐらい」
――なるほど。彼が川崎フロンターレに所属していたのは、J2だった2002年から2004年の3年間。等々力の観客がまだ少なかった時代ですよね。
「2000人とか3000人ぐらいで、Gゾーン(応援席)が1ブロックしか埋まっていなかったぐらい。2ブロック埋まると『今日は客が多いなぁ』と思った時代だね」
――そこで「岡山劇場」と呼ばれる試合後のマイクパフォーマンスが生まれて…天野部長天野部長はどんな感想を抱いていたんですか。
「最初? 衝撃でしたよ(笑)。だって試合後、いきなりサポーターの前で小麦粉をまいたり、サポーターに抱きついたりするからね。今でこそ見慣れているけど、10年前には考えられなかったから」
――小麦粉をまいたんですか。
「そう。いまでも覚えているよ。小麦粉はサポーターが用意していたみたいだけど、僕は全然気付いていなかった。試合後、オカは今と同じように、サポーターのゾーンに行ったのだけど、次の瞬間、突然、目の前がブワッと白くなった。オカの近くに居た僕にも小麦粉がかかったけど、『この選手はすげぇー!』と」