J2降格決定により取り沙汰された「存続の危機」
10月5日、J1第28節のC大阪戦に0-2で敗れ、大分トリニータの来季J2降格が決定した。昨年11月に初のJ1昇格プレーオフを制し、J2の6位から劇的な昇格を果たしたが、今季はここまで1勝7分20敗。リーグ戦6試合を残して1年での降格決定となった。
試合後、メディアからの質問のほとんどは、青野浩志社長へのクラブの財務状況に関するものに集中した。現時点で約5億8千万円とされる債務超過を15年1月までに解消しなくては、「クラブライセンス制度」によりJクラブとしてのライセンスを剥奪される。
J2に降格すればリーグ配当金の他にも広告料や入場料などの収入減は必至で、メディアとしては「すわクラブ存亡の一大事」とばかりに群がったかたちだ。だが、青野は苦笑する。
「J2降格は、確かに追い風にはなりません。でも、我が社の経営目標はもとより『毎期1億円の利益を計上する』というもの。収入が上がれば魅力的なチームづくりのために人件費を増やすし、収入が少なくなれば経費削減して支出を抑える。この計画は09年の経営危機以来、ブレていません。J1にいようがJ2にいようが影響はないんです」
前代未聞の経営危機が明るみに出た09年秋、当時は一介の県職員だった青野が経営企画部長として大分FCへの出向を命じられて4年。10年度からは“火中の栗”を押しつけられるかたちで代表取締役社長に就任し、常識的に考えれば再建は絶望的なレベルの負債を背負ったクラブで舵を取ってきた。
堅実なやりくりの一方で、大きな賭けに打って出たこともある。その姿に、かつての困惑は見られない。危機的状況は乗り越えられたのだろうか。