パスの出し手としての酒井宏樹の責任
もはや「特別扱い」といってもいいだろう。酒井宏樹のことである。ブラジル戦、イタリア戦で右サイドバックの内田篤人はチーム内でもトップクラスの好パフォーマンスを見せていた。その内田を差し置いてメキシコ戦で先発起用したところにザッケローニ監督の期待の高さが表れている。
だが、結果的に酒井はまたしてもザッケローニ監督の期待に応えることはできなかった。監督が酒井に期待したのは攻撃面では右サイドからの精度の高いクロスと、守備面では183センチの強さを活かして空中戦に勝つことだ。
まずは攻撃面。酒井自身が「ミスもあったりして、ビルドアップのところで落ち着かなかった」と語ったように、攻撃の最初の段階でのミスが目立った。
サイドバックはフィールドの中でも比較的フリーでボールを持ちやすいポジションだ。そのため、プレッシャーの激しい現代サッカーではサイドバックが起点となってゲームを作っていくことが求められる。だが、酒井は攻撃の組み立てに関しては内田に比べてかなり拙い。
内田との最大の違いはファーストタッチの置き所だ。例えばセンターバックやボランチからのパスを前に上がりながら受けるとき。内田はファーストタッチでスッと前にコントロールして流れるように次の選手につなげていく。しかし、酒井は足元にボールをピタッと止めてしまうので、そこで攻撃のスピードが落ちてしまう。
酒井がボールを止めることで、すぐにパスを受けようとイメージしていた前線の選手が動き直さなければいけなくなってしまう。相手にとってもプレーが遅れる分、マークにつきやすくなる。本田圭佑や岡崎慎司がボールをコントロールしたところでつぶされるシーンが多かったのは、パスの出し手となる酒井の責任も大きい。
彼にとっては右サイドのペアを組む選手が、裏への飛び出しを得意とする岡崎だったことも攻撃面でのプレーを難しくしたところもある。酒井のように組み立てに難があるサイドバックは、清武弘嗣のようにキープ力がある選手とペアにしたほうが活きやすい。酒井と岡崎を組ませたことはお互いにとってマイナスだったといえる。