【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue55】掲載
次の10年を担うテクノクラート
「(一昨年の観客減少について)震災による日程変更を含め、いろんな条件が重なってそうなったと思います。1つの仮説を立てていくと、目標設定は別として頭打ちになる要因というものは存在していたんじゃないかと。たとえばスタジアムの限界。柏レイソルがあれだけ首位をキープしながら、スタジアムが1万5000しか入らないとか。そういった、各クラブが持っている限界的なものに加えて、国内のスター選手の流出というのもありましたね。
(クラブライセンス制度導入について)今年は各クラブの経営者に、クラブライセンスの運用も含めて、きちんとしたリーダーシップをもってやってもらいたいと思います。今までJ2に上がれば、まあ何とかなるだろうという感じだったと思う。しかしこれからは、経営者の資質や能力、経営判断といったものが大きく求められてくる。
(20シーズン目のJリーグについて)目標だった40クラブができた中で、社会環境にもよるんでしょうけど、これから世の中の動きが変わってくる。少子高齢化、経済も不安定な部分があるし、若者にとっても何が魅力的なのかわからないところもある。そうした動きをしっかり睨みながら、Jリーグが世の中に提供しているものが、サッカーだけではないベネフィット(利益)を提供しているんだという、われわれの原点を見つめ直す必要もある」
Jリーグチェアマン、大東和美は、20シーズン目のJリーグについて、楽観も悲観もしていなかった。
Jリーグチェアマンは、なぜか4代続けて関西出身者で占められているが、前任者3人に比べると大東は最もオープンなイメージがありながら、1つひとつの発言には極めて慎重である。こちらのオフサイドトラップは通用しないし、際どいスルーパスに対してまったく動じる様子もない。
それでも、Jリーグのトップが今、何を考えているのか、そのアウトラインはおおよそ理解できた。ここから先は、より実務面にブレイクダウンしたところでのJリーグの将来的な戦略を知っておきたい。そこでチェアマンに続いてご登場いただくのが、Jリーグ事務局長の中西大介である。
1965年8月14日生まれの46歳。私と同世代のテクノクラートは、次のディケイド(10年)の舵取りを担っている。以下、中西の言葉を再構成しながら、今後10年に向けたJリーグの施策を俯瞰してみることにしたい。