今季の補強に見える本来のスタイルへの回帰
鹿島アントラーズは今季の移籍市場で、ダヴィ、中村充孝、前野貴德という昨季のJ2を沸かせた将来性のある選手の獲得に成功したが、クラブのタイトル獲得に貢献した興梠慎三、新井場徹、増田誓志といった実力者がクラブを去ってしまった。
一見すると戦力ダウンのようにも映る今回の補強だが、今後数年間に対して明確なヴィジョンを持った的確な戦力補強と言える。なぜなら、得点力のあるストライカー、技術が高く流動的に動きながらドリブルで崩せる2列目、そして若くて攻撃的な左SB、というポイントは次のシーズンで覇権奪還を狙うためには、不可欠な補強ポイントだったからだ。
まず前提となるのが、鹿島には明確なスタイルが存在するということだ。基本のフォーメーションは[4-4-2]のボックス型。FWは2トップであり、4人のMFは明確に役割が定まっているわけではなく、流動的にポジションを変えながらパスとドリブルで崩すことを理想としている。そのため、サイドからの崩しは主にSBが担うことになる。
しかし、昨季は野沢拓也の移籍で戦力が揃わず、前監督のジョルジーニョが縦に速いサッカーを志向したこともあって、少し毛色の違うサッカーに落ち着かざるを得なかった。そこで、覇権奪還を目指すためにも従来のスタイルに回帰する必要があり、そのために必要な選手たちが獲得されたのだ。
若くて生きの良い選手を闇雲に獲得したわけではなく、そこには明確なヴィジョンが存在する。
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