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アンドレア・ピルロ 天才レジスタの「戦術眼」(後編)

『新生ユベントスを操るマエストロのプレービジョンを聞く』
ゲームの先を読み、長短のパスを自在に操る希代のレジスタが理想とするサッカーとはどのようなものか? また、そのプレー理論とはいかなるものなのか? 天才の戦術眼についてたっぷりと話を聞いた。翻訳:宮崎隆司

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Sinichiro Kaneko/Kaz Photography


アンドレア・ピルロ【写真:Sinichiro Kaneko/Kaz Photography】

【前編はこちらから】 | 【欧州サッカー批評5】掲載

――ならば、もう一方の“考えたパス”、今季のプレーに限って言えば、やっぱりホームでの対パルマで魅せた君の……。

「あぁ、あのクラウディオ(・マルキージオ)へのアシストだね。DFラインの裏に抜けるクラウディオに縦パス。確かにあれは考えたパスだよ。もちろん、パスを出す直前にゴールまでのイメージも出来上がっている。なので、単に縦に入れるだけじゃなくて、あの場合は僕の立ち位置から角度的にはほぼ垂直に前へ、そして浮かしたボールを入れてるんだ。

 その到達点にクラウディオがピンポイントで合わせてダイレクトで、しかもアウトサイドでGKの左に流し込むというところまでイメージした上でのパスだよ。もちろん、受ける側のクラウディオも同じイメージを描きながら走っている。あれは本当に完璧なプレーだったね」

――一方、DFラインの前から組み立てを始める場合はどうなんだろう。さっき君が言ったように、そのエリアでは敵の激しいプレスを受けることになるわけだが……。

「そうだね。でもここでもやっぱり言えるのは状況次第。ケース・バイ・ケース。ディフェンダーからのパスがどこから来るか、その角度によっても選択すべきプレーは違うし、プレスに来る敵の数によっても違うし、味方がどの位置に動いているのかでも違ってくるし、大切なのは、あくまでも状況を正確に察知することだね。その上で最も効果的なプレーを選択しなければならない。あえて抽象的な言い方をすれば、受ける際に相手のプレスを“抜く”というイメージだね。

 ただ、何よりも重要なのは、あのグアルディオラがブレッシャでプレーしていた頃によく言っていた言葉なんだと改めて思う。当時の僕は彼を見るために頻繁に足を運んでいたんだけど、そこで彼はこう言っていたんだ。“『受ける、考える、パスを出す』ではなく、『考える、受ける、パスを出す』”。

 基本中の基本、至って当たり前のことなんだけど、これがやっぱり最も大切だと思うんだよ。つまり、思考速度。この速さが“違い”を生む。そして、僕のようにフィジカル的なスピードのない選手でも、その欠点を補うことができる」

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